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眼形成外科医とは!?
眼科研修で知っておくべき
サブスペシャリティ

皆さん、眼科という分野についてどのようなイメージを持っていますか?視力の改善や眼疾患の治療といった、いわゆる「見えること」を支える領域を想像するかもしれません。しかし、眼科にはそれだけでなく「見た目」や「目の周りの機能」を扱う新しい分野があります。それが「眼形成外科」です。

眼形成外科(がんけいせいげか)は、眼球だけでなく目の周りの組織や構造に関わる様々な問題に取り組むサブスペシャリティです。眼瞼(まぶた)、涙道、眼窩(目の奥の空間)に関連する手術や治療を行うことで、視機能の改善はもちろん、患者さんの外見的な満足感や生活の質(QOL)の向上を図ります。例えば、眼瞼下垂の手術でまぶたを持ち上げたり、涙道閉塞の治療で涙の通りを良くしたりといった治療を行います。

Question:
なぜ眼形成外科に注目すべきなのか?

Answer1:美容と機能の両立

一般的に大病院などで行う保険診療が対象にしている患者と、美容医療などの自由診療が対象にしている患者は異なります。保険診療が病気で身体が棄損した状態になったものを正常に戻すことに主眼を置いているのに対し、自由診療ではもともと正常であった状態を手術によりさらに良くするということを目標にしています。ですが、それぞれに携わる医師は双方の分野のことを良く知りません。眼形成外科では、美容的な観点と機能的な改善の両方を重視します。例えば、外見の改善を目的とする手術が結果的に患者の視界を広げ、生活を大きく改善することがあります。甲状腺眼症になって眼球突出により顔貌が変化し、ドライアイや涙目にもなった状態を、見た目も機能も治すのが眼形成外科医です。眼形成外科医は「美しさ」と「機能」という二つの目標を同時に追求することになり、これが大きなやりがいを感じさせてくれます。

Answer2:多様なスキルが身につく

眼形成外科は、細かい解剖学的な知識と精密な手術技術が要求される分野です。眼球やまぶた、眼窩や涙道などに関する詳細な解剖の知識が必要になります。それに加え、患者の美的感覚や社会生活を考慮しながら治療を提供するため、単純な外科的技術だけでなく、患者とコミュニケーションを取りながら個別に最適な治療計画を立てるスキルも必要です。この分野を学ぶことで、技術と人間的なケアのバランスを取りながら実践できる医師を目指せるでしょう。

Answer3:高い社会的ニーズ

加齢に伴う眼瞼下垂や涙道の問題など、眼形成外科がカバーする領域には年齢とともに増加する疾患が多くあります。また自由診療も取り入れやすい分野でもあります。これから迎える高齢化社会において、保険診療が相対的に縮小していく中でこれらの治療へのニーズは年々高まっていきます。また、機能回復に加えて見た目を重視する現代の価値観において、眼形成外科は患者に非常に感謝される分野です。

Answer4:
高い専門性とライバルの少なさ

眼形成外科は比較的新しい分野であるため、専門としている医師が少なく、さらに技術を研修する施設が全国にほとんど存在しないため習得するためのハードルが高いので、競争相手が出現する可能性が低いことも魅力の一つです。このように、高度な専門性を身につけることで、自分の強みを際立たせ、希少なスキルを持つ医師としてキャリアを築くことができます。将来の開業を考えている医学生・研修医にとっては非常に魅力的な専門科であると思います。

Answer5:
労働時間中の手術時間の割合が大きい

眼形成外科は、労働時間中に手術を行う割合が大きいことが特徴です。眼形成外科の治療には、手術が重要な役割を果たしており、診察だけでなく実際に手術を行う機会が多いです。このため、手術技術を磨くことができ、外科的なスキルの向上を直接的に感じることができます。手術が好きな医師にとっては、大きなやりがいを感じられる分野です。具体的には、一般的な眼科医の労働時間の割合は外来:手術=9:1ですが、眼形成外科医の場合は外来:手術=5:5です。

Answer6:
人工知能に代替される部分が少ない

AIは医療の分野での活用が確定的です。AIにより人が介入することがなくなり、職業自体が無くなりつつある科もあります。眼形成外科は高度な手術技術と個別に異なる患者に対する判断力を必要とするため、人工知能(AI)によって代替されにくい分野です。手術の中での微妙な判断や、患者ごとの異なる解剖学的特徴に合わせた治療計画の作成など、人間の感覚と経験が求められる要素が多くあります。そのため、将来的にも安定した需要が見込まれる分野です。

Topic:
眼形成外科と形成外科医の違い

眼形成外科と形成外科は、どちらも外科的治療を通じて患者の外見や機能を改善することを目指していますが、アプローチや専門分野に違いがあります。

眼形成外科は、眼科の一分野であり、目の周囲に特化しています。眼瞼、涙道、眼窩など、目の機能に密接に関連する部分を治療し、視機能と外観の両方を改善することを目的としています。眼科の知識を基盤に、特に目に関する問題に対応するため、細かい目の構造や視覚に関わる治療が得意です。

一方、形成外科医は、顔や体全体の外傷、先天異常、腫瘍などの全身の疾患を扱います。身体のどの部分でも治療対象となり得るため、非常に幅広い解剖学的知識と技術が必要です。形成外科医は、特に美容目的の手術や全身にわたる機能的・審美的な再建手術を行うことが多いですが、眼周囲に限らず、体全体を対象とする点が眼形成外科医との大きな違いです。つまり形成外科ではすべてを見なければいけないため、必然的にそれぞれについての知識は浅くなってしまいます。

眼形成外科医は、形成外科の技術を目の周りの特定の問題に応用し、視機能や目元の美しさを両立させることを専門としています。そのため、眼形成外科は、眼科と形成外科の要素を融合させた非常に特化した分野といえます。眼形成外科医は眼の周囲のことだけに特化しているため、知識や経験が深くなるのです。

このように全身を浅く広く扱う形成外科と、眼とまぶたなどを専門的に取り扱う眼形成外科では大きな違いがあります。

一方でそのキャリア形成に大きな差がありますので注意が必要です。眼形成外科は眼科医が行う形成手術ですので、眼科医として研修を受けていることが前提になります。一方で形成外科では眼球とその周囲の疾患について詳しく学ぶことは出来ませんので、形成外科医になってから眼形成外科医になることは出来ません。

形成外科はそのキャリアの終着点が見えにくい分野であり、開業も難しいことが知られています。一方で眼科であれば患者数が多いため開業に向いていることが知られています。その中でも眼形成外科は新しい分野であるため、ライバルがほとんど存在しないブルーオーシャンです。眼科と形成外科で迷ったら、眼科医になって眼形成外科を専門にすることをお勧めします。

最後に:医学生や初期研修医にとっての魅力

眼形成外科は、通常の眼科とは異なる手術や治療に携われることが魅力です。視力検査や眼底の診察だけでなく、患者さんの顔の外観や機能に大きな影響を与える手術に関わることで、医療の幅広さと深さを実感できます。また、他科との連携が重要であり、形成外科や耳鼻科、さらには脳神経外科とも協力しながら治療にあたることが多く、総合的な医療の提供を経験することができます。

眼科に興味がある方、あるいは新しい分野で挑戦してみたい方にとって、眼形成外科は非常に魅力的な選択肢です。患者の視機能と美しさをサポートし、彼らの生活の質を高めることができるこの分野に、ぜひ一度注目してみてください。

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